それは、あたしが知らないちぃ君のこと。

ちぃ君の恋愛事情ってヤツなんだろう。

あんな完璧な容姿を持つちぃ君に“欠点を

与えてしまった人”が居る。

「わ、別れてしまったのか?」

ゾワゾワ胸が騒ぎ出す。

何故か、居た堪れない気持ちが押し寄せて来て

意味が分からない胸焼けに昼食にとんかつ食べる

んじゃなかったと後悔した。

「あー、その先生結婚したって言ってたな。」

可笑しいな、何でホッとしてるんだ。

ちぃ君にとっては悲しい話なはずなのに、

人の不幸にホッとするなんてあたしの心

ドス黒い何かに侵食されてるに違いない。

寝てる時に宇宙侵略を目論む宇宙人に

何か投与されたに違いない。

直ちに、検査入院して異常を調べなくては!!

「っていうか、今はヒヨ」

「よっちゃん、早くおでん食べたい。」

「えっ!?」

「早く、行くんだ。売り切れちゃうだろうよ。」

「ちょっと、待て。」

この変な胸焼けは気のせいだ。

だから、聞かなかったことにしよう。

今の話は何も聞かなかった。

ベシンっと頬を引っぱたいたあたしに

よっちゃんがビクッと肩を揺らせた。

「ひ、ヒヨリン、大丈夫か?」

「あ、あはは、よくあることよ。」

「真面目に心配だ。慶詩さんにいい病院

紹介してもらった方がいいんじゃないか?」

「心配しなくともあたし気分爽快よ。」

「ヒヨリン、俺が悪かった。

おでんにフライドチキン何でも買ってやるよ。

そんなにお腹空いてたんだな。気付いてやれなくて

悪かったからな。なっ、もうすんなよ。」

「じゃあ、フライドポテトも買ってくれたまえ。」

ああ、また胸焼けしそうなもの頼んでしまった。

しかし、こんなこと滅多にないからね。

よっちゃんの良心に感謝して頂こうじゃないか。