「いや、千治さんたちヒヨリンのことになると
すげー考えてっから。」
「まぁ、友達だからそうだと嬉しいね。」
「それとはまたちが」
「だけど、肝心なことは何も教えてくれないよね。」
それが丁度いい距離感になってくれてるから今は
有り難くも思うけどね。
「それは、ヒヨリンを傷つけたくないからだ。」
「えっ?」
「こっちの世界のことにヒヨリンを巻き込みたく
ねぇんだって言ってた。」
「もう巻き込まれたも同然なんだが?」
「だけど、やっぱり違うんだ。
ヒヨリンと俺たちじゃ住む世界が違いすぎる。」
同じだよとは言えなかった。
きっと、あたしもそう思ってたからだ。
「大事にしてっから下手なこと言えねぇんだ。
傷つけられるぐらいなら隠しときてぇんだ。」
「か、隠されてるのか!?」
あたし、神隠しされてんのか?
それは初耳だぞ。
千となんちゃらの神隠しなら20回以上見たけど、
顔なしはリアルに友達になりたいと思ったぞ。
「ヒヨリンは守られる柄じゃねぇとか言いそうだけど、
その覚悟あっても傍に置いときてぇと思ってるって
千治さんは言ってた。」
「ど、ど、どういうことだ!?」
「要約すると、ヒヨリンはとんでもない人に
気に入られたってことだぜ。」
「そのとんでもない人ってちぃ君!?」
「その呼び方だってヒヨリンぐらいじゃないか。」
「伊織君もちぃーさんって呼んでるよ。」
「気を許してるって証拠なんじゃねぇかなって俺
は思ってるぞ。」
「ちぃ君、気が緩みっぱなしだと思うのだが・・・。」
「そうでもねぇよ、考えてないようですげー考えてる人だ。」
「物事には裏があるって言いますからね。
因みに、探偵や刑事ドラマでよく裏を取れって
いうのもよく言いますよね。」
まさか、ちぃ君がそんなやり手だったとは
見くびるもんじゃなかったね。
あんなに普段天然ワールド炸裂させてるのに
実は計算されたものだったのか!?
益々、訳の分からん男だこと。

