でも、不吉によぎるジョーカーに視線を向ける
京の表情に馨が困ったように視線の先を辿った。
「あ、ジョーカー見つかったんだな!!」
最近、見つからないと大騒ぎしていたジョーカー
が見つかったのかナルが嬉しそうに声をあげた。
「おっ、良かったな。」
便乗してユウヤがナルにジョーカーを差し出す。
「不吉だね、京ちゃ~ん」
「殴る。」
「その単語発言やめようよ。」
「伊織がその呼び方やめれば。」
「あのな、京ちゃ~ん。」
殺気立てる京に伊織が煙草を咥えて、
ジッポで火をつける。
カチンという音が妙に響く。
「あいつにそんな心配要らねぇ~のよ。」
「・・・・・・・・・」
「考えても見てみろよ。北地区行って、
頬一発殴られた程度で帰ってきたんだぜ?」
「・・・奇跡。」
「そういうことだ。心配するだけ無駄な話だろ。
行くなっていうところに出向くようなあいつ
を一々心配するほど過保護にならなくてもウチの
自慢のお姫様は賢い上に豪腕で腕っ節はそこら辺
に居る奴らよりは強いだろう~よ。」
煙をふうと吐き出す伊織は穏やかな顔をしていた。
「伊織の言う通り、あいつに余計な心配を無用だろ。
か弱くねぇもんな。ちっとも女々しくねぇし。
男らくて泣けてくるだろ。」
「・・・泣くところじゃない。」
「まぁ、ちょっと心配なところあるけどな。
ヒヨリンに何かあっても俺たちで守れば
いい話ってことだ。京は深く考えてるからな。
あんまり思いつめて考えることねぇよ。
このジョーカーだって大したことねぇだろ。」
ナルがジョーカーをペッとテーブルに叩きつけた。
「京、ヒヨリンなら大丈夫だぞ。京がヒヨリン
を心配するとか珍しいな。」
「・・・そうか?」
「おうっ!きっとヒヨリン嬉しがるかもな。」
ナルの癒しの笑みにその場は穏やかな空気が流れた。
「ナル、プリン買った。」
そして、帰ってきたウチのボス。

