とくにこれって欲しいモノが思い浮かばなくて、
読んでいた洋書から顔を離す。
「お前って今時珍しいよな。」
慶詩に言われるとムカつく。
「それは褒めてるのか?貶してるのか?」
「褒めてやってんだろうが。」
「分かりづらいと思うんですが。」
慶詩が舌打ち打ちながら雑誌に視線を下ろす。
「普通、ブランドもんのバッグが欲しいとか
言うもんじゃねぇーの?」
「敢えて言うなら、靴下が欲しい。」
最近、靴下が三足ほど親指辺りに穴があいて、
おさらばしたところだったんだ。
「3足でお得なのでいいんですが。」
「おめぇ、もっと布面積大きいものに
してやれよ。靴下買いに行くターヤンと
やっちゃんの身になれ。」
「だって、思いつかないんだもの。
シャーペンの芯でも良い!」
「だから、何でそんな地味なもんばっかなんだよ。」
「元々、派手なものは持たない主義だ。」
「まだ、本にしてもらった方がいいんじゃねぇの?」
「本は欲しいものがありすぎて駄目だ。
やはり、あたしはいい。お気持ちだけ有り難く
頂戴致しましたと言ってくれたまえ。」
「日和ちゃん、それは2人が納得しないと思うよ。」
馨君が苦笑いを浮かべる。
「分かった、よく考えておくとするよ。」
洋書に視線を移動しようと思ったら、
「ヒヨリン、コンビニ行こうぜ。」
今日も素晴らしいアフロを見せつけるよっちゃん。
「1人で行けばいいじゃないか。」
「ヒヨリン、ケチ!」
「け、ケチじゃないだな!むしろ、太っ腹だ。」
重い腰をあげてよっちゃんのところに言って
文句を言ってやるとよっちゃんがじゃあ行くぞ
と言いながら部屋を出た。
「なっ、まだ行ってやるとは言ってない!!」
「おでん買ってやるから行こうぜ。」
「うむ、仕方ない。大根とたまごがいいのだが・・」
ソファーのところに一旦戻ってマフラーを取って、
ひざ掛けを置いた。

