うん!?
何か、お酒臭い気がする。
ギョっとしてよっちゃんの目の前にあった
グラスを奪い取って鼻を近づけた。
「お、おじさんっ、これって・・・」
「あれ、それさっきのお客の片付け忘れてたかな?」
じゃないよっ!!
「これ、日本酒ですか?」
「おっ、そうだよ。日和ちゃんにはまだ早いかな。」
「お湯割りですよね?どのような比率ですか?」
「えっ、そうだな。7:3だったと思うけど。」
「お水を頂けますか?」
「いいけど、どうかしたのかい?」
「いえ、こっちの話なのでお気になさらず。」
半分ほど残ったお湯割りのグラスをおじさん
に渡して席に着いた。
よっちゃん、絶対飲んだな。
しかも、顔が赤いからお酒に弱いのかもしれない。
耳まで赤く染まってるよっちゃんを横目に大根
を頬張っているとおじさんが水をくれた。
「よっちゃん、お水ですよ。」
よっちゃんが横に振り返ってジッと水の入った
グラスを見つめた。
「何だ、美男酔ったのか?」
どうやら、よっちゃんはお酒を飲むと無口に
なるらしいことが分かった。
さっきから、ポカーンとしていて何も喋らない。
「しっかりするのです!」
お水をよっちゃんの手にしっかりと握らせる。
しっかり飲めよと思ったのも束の間だった。
バシャッと音がしたと思ったら、お水を
被ったよっちゃんが隣に呆然と座ってた。
「えっ!?」
そのまま、よっちゃんは後ろにひっくり
返って地面に突っ伏した。
「よ、よっちゃーん!!」
「あれ、そこのお兄さん大丈夫?」
おじさん、全然大丈夫じゃありません。
まだおでんも口にしてなかったであろうよっちゃん。
今日は災難続きで可哀想だからせめて温かいおでん
を提供してあげたかったがしかし食べる前にバタンキュー
になるとは恐るべき運の悪さだ。
もう、才能だとしか思えないよ。

