あたしから話しかけることなんてなかった。

イメージだって最初から良かったわけじゃない。

どこか、不良っていうのを馬鹿にしていたかもしれない。

「褒めてるよ。だって、よっちゃんを元気づけたい。

今は悲しくてもきっといつか報われる日が来るんだ。

忘れようとしなくていい。ただ、あんなこともあったな

って思い出に変えれば痛みもきっと薄れる。」

無理やり忘れてやろうと思うから蓄積されるんだ。

「お、俺、結構好きだった。」

「うん、ちゃんと分かってる。」

よっちゃんの目から零れ落ちる水滴。

キラキラ光って地面を濡らしていく。

「最初は軽い気持ちで可愛いなって思っただけで、

ッメールしててすげーいいなって思って・・」

「そっか、メール上手なのかもね。」

嗚咽混じりに喋りだしたよっちゃんは

格好悪いぐらい泣いてた。

背中を摩りながら、人々が行き来する往来の

隅っこでしゃがんで2人で話した。

「今日のプランだってヒヨリンと下見行った

ところ行くはずだったのによ。全然上手くいかなくてよ。」

「うん、確かに可笑しいなって思ってた。」

しゃっくりをあげるよっちゃんは子どもみたいだ。

「俺のこと良い人だって言ってくれた。」

「よっちゃんは良い人だもん。」

「好きだって言われたのに答えられなかった。」

「いきなり言われたらビックリするよ。」

「だから、俺逃げて・・」

「うん、逃げるのは良くなかったよね。」

まさか、自分が不良を慰めることになる

なんて思ってもみなかった。

鼻水垂らして泣くよっちゃんはあたしよりも

ずっと素直に感情を表してる。

「だけど、よっちゃん全部吐き出したら

もう後ろは振り返っちゃ駄目だよ。

前向いてかないと次に進めないでしょ?」

今日ぐらい泣いたって誰も文句は言わないはずさ。

男が泣くなって誰が言ったんだ。

別に泣いたっていいじゃないか。

その分、前向きになればいいんだから。