よっちゃんがあんなに逃げ足早いなんて聞いてない。

前に不安げに揺れるアフロ頭を発見する。

「お、お代は後できっちり払うからとりあえず

よろしく頼んだよ。あたし、よっちゃんを追う!」

逃げ足が早いよっちゃんを確保出来るのは最早

あたしのみかもしれなかった。

「捕まえたら連絡しろ。」

ちぃ君もきっと心配してるんだね。

そういえば、よっちゃんのメール見たから

ちぃ君の励ましであろうメールも知ってる。

「う、うん!必ずね。」

すっかり遅くなったせいか星がチカチカ

と空にきらめき出している。

カラオケに行ったのに結局何も歌わずに

出てきてしまった。

ああ、なんて勿体無いんだろうか。

折角だから歌っておけば良かったな。

しかし、カラオケ店を出てすぐによっちゃん

を見失ってしまった。

手がかりはアフロだけになってしまう。

あのアフロは特徴的だが、どこにも

そのような髪型をした人は居らず、

途方に暮れる。何があったのかな?

結局、よっちゃんは魔性の手に落なかった

のだから喜ぶべきことなのだろう。

でも、よっちゃんが逃げ出したくなる

ようなことがあったんだと思うと今すぐ

よっちゃんに会えても声を上手いこと思いつかない。

よっちゃんはヘタレだけど良いヤツで、

ゲーム弱いけど良いヤツでどうにか

してあげたかった。

いつも遊んでくれるよっちゃんが元気を

なくしてしまうほど悩んだ。

アフロが命だと言い張るよっちゃんが

アフロそっちのけになった。

あたしは何て声をかけてあげたらいいだろうか?

ただ単純に慰めればいいってわけでもない。

これで、よっちゃんが自信をなくしてしまったら

取り返しがつかない。

自信が付けばいいなって思ったことがこんな

事態を招いてしまった。

もっと、あたしがしっかりしてたら良かった。

悔やむことばかりが思い浮かぶが頭を横に

振って断ち切った。