確かに、忘れられない人がいる。
あたしも人間だから一応初恋というものを
した覚えはあるけどうろ覚えでそれが恋心
なのかはとにかくよく分からない。
もう一度会ったら確証が持てるかもしれない。
だけど、もう会えないかもしれない。
『日和ちゃん、笑って。』
きっと、あたしが笑えたのは“あの人”が
居たからなんだと思う。
あたしが落ち込んでても、辛くても、寂しくても
一緒に居て傍にずっと居てくれた。
「ヒヨリン、そんな落ち込むこ」
「そうか、あたしが出来ることはただ一つだ。」
悲しい出来事があったら一緒に悲しめばいい。
嬉しい出来事の時は一緒に喜んだ。
それなら、どんな時でも半分子だ。
肉まんを半分子するようにジグザグな半分子
だけど、あたしが“あの人”にしてもらった
ようにしたらきっと痛みは減るよね。
「日和ちゃん、大丈夫?」
「みんなも付き合うのだ。よっちゃんを
励まそうの会に申請してくれ!」
「えっ!?」
「そうと決まったら会場の場所を確保
しないといけないではないか。」
「おめぇの切り替えの速さは瞬間移動レベルだな。」
「あたしが落ち込んでもしょうがない。
そうだ!兄ちゃんが言ってたおでん屋さん
があるからそこにしよう。」
「ヒヨリン、美男確実にフラれんのか?」
「ユウヤ、例え今日振られなかったとしても
この先よっちゃんが傷つくのは目に見えてる。
悪い芽は早い内に摘んでおいた方がいい。」
あたしがよっちゃんの目を覚ませるしかないのか。
まだ、今日なら傷は浅いだろう。
「どっかのドラマで言ってそうなセリフだな。」
「そうかな?ところで、おでん屋さんに参加
してくれるよね!?」
「日和ちゃんは大丈夫?」
「あたしは全然大丈夫だ。」
どうせ、兄ちゃんは真君のところに行くだろうからな。
そんなことを考えていたらよっちゃんは彼女の
静止を振り切って逃走したらしい。
よっちゃんがヘタレで良かったとこの時は
本当に思ったが、逃げ足が早すぎる。
これにて、尾行は閉幕した。

