ここまで、出来た話だと思った。
こんなに上手く行くわけなかった。
「日和ちゃん?」
だけど、何て言えばいいんだ。
よっちゃんが好きになった女の子なのに、
よっちゃんが傷つくことは目に見えてる。
頑張れと言っておいてあの子はやめた方が
いいよって言わなきゃいけなくなった。
カラオケ部屋に来てまだ1曲も歌ってないあたしたち。
そこに電子機械と別に分厚い本が1冊あった。
それを徐ろに自分の方へ持ってきた。
「ヒヨリン、歌う気になったのか?」
ユウヤ、あたしは一発自分に喝を入れるわ。
鈍い音が部屋中に響き渡った。
その分厚い本を思いっきり自分の頭に叩きつけた。
あたしの頭は意外と丈夫だったらしい。
まだ、そこまでダメージ受けてない。
軽かったかな、よしっ今度は決めてやるわ。
「ヒヨリン、何やってんだよ!!」
ナル君に阻止された。
分厚い本の効果は十分あったらしい。
「・・・痛い。」
「そりゃ、当たり前だろ。お前、脳外科
行った方がいいだろ。いいところ紹介して
やっから行けって。」
無力な自分にこんなに苛立つ。
痛いのは頭何かじゃないよ。
傷つけられるよっちゃんを思うと悲しい。
心臓が痛いというのは心が痛いということなのか?
サユに泣かれた時みたいに胸がきゅっと沁みる。
よっちゃんも泣くのかな。
「ひよこ姫、それが世の中ってもんだろ。
美男もいい経験になったんだからお前が気にする
ことじゃね~だろ。その内、ケロッと忘れちまって」
「伊織君、それ慰めてるのか?」
ケータイをばっちり見られてたみたいだ。
伊織君にはお見通しされたわけだ。
「そんなに簡単なものなのかな?」
あたしには経験がないはず・・だから分からない。
だけど、好きになった人のことをそう簡単に忘れ
られたら好きになってないんじゃないかな。

