フロントで馨君が何かを喋ってるようだった。
「日和ちゃん、飲み物はオレンジジュースでいい?」
「は、はいっ!」
初めてきたもので何がなんだかよく分からない。
「良かったね、美男の席が向かい側だから様子が
見えるところで。」
「う、うん。な、何かお部屋が暗い気がするよ。」
「そうだね、暗いの嫌だった?」
「そ、そういうわけではない!ただ、何故暗く
する必要があるのかなと思っただけで。」
「確かに、言われてみれば何でだろうね。」
馨君の案内で到着した部屋は薄暗かった。
「そりゃ、ここでしけ込めるからだろ。」
「なっ、最近の若者は何を考えているんだ!!」
だから、若者が馬鹿にされるんだぞ。
「何考えてるっておめぇのように純粋な若者
なんてひと握り居るかどうかだろ~。」
「もっと、将来を見つめるんだ!!」
「今が楽しけりゃいいだろ。」
伊織君はよくこの場所で・・・考えたくないわ。
破廉恥ワールドに突入なんてまだ早い。
「伊織君なんて魔女にカエルに変えられてしまえばいいんだ!!」
「何、ひでぇーこと言ってんだ。」
「伊織君がそのひでぇーことしてるんじゃないの。」
乱世というのはこのことか。
「大体、あたしはクルミちゃんからカラオケは
お歌を歌う憩いの場所だと聞いてるぞ。」
「それがここの目的であってるよ。伊織の
ことは気にしなくていいよ。」
「そ、そうだよね。」
馨君の微笑みは絶大な効果だ。
だけど、すぐにその絶大な効果も吹き飛んだ。
「ぎゃあああー、よっちゃんが破廉恥に走っちゃうよ。
神様、仏様、大仏様、そしてお地蔵さんよっちゃん
の悪いお心を追い出してくんなませ。」
「何だ、その変な言い回しはよ。」
「だ、だって、至近距離は良くないよ。
く、く、暗いんだよ。か、顔近いとか
どうしてそんな近づける意味があるんだ。」
「おめぇー、鈍感だな。そんなもんやれるからだろ。」
慶詩、最低だ。お前、見損なった。
そんなこと平気で言うな。
よっちゃんがそんな男みたいじゃないか。

