もう少し、尾行ってのはコソコソするもの
だと思ってたんだけど!
よっちゃんが後ろに振り返りそうになるたび
みんなを店に押し込めた。
「日和ちゃん、ここ・・・・」
「しっ!!」
よしっ、よっちゃんと女の子が雑貨屋さんに
入って小物を探っている。
「お客様、ご試着も出来ますよ。」
「あー、そうなの。お姉さん、仕事終わるの
何時頃?それまで、俺待ってるけど。」
い、伊織君、こんな時までナンパなんか
してる場合なのか!?
伊織君、あんたは血も涙も通ってないのか!!
やっぱり実はサタンだった疑惑浮上だよ。
「えっ、京君何外出ようとしてんの?
見つかったらどうすんだね!!
ユウヤ、京君を確保するんだ。」
京君が平然な顔をしてお店から出ようと
したところで雑貨屋で小物を見ていた
女の子がふとこちらに不思議そうな顔を
してまた小物に視線を写した。
「あ、危ないところだった。」
「別に平気だったと思う。」
京君、何をそんなにこの店から出たがってんだ?
ナル君の手汗も気になる。
ど、どうしたんですか!?
発汗作用のドリンクでも飲んじゃった?
「日和ちゃん、さすがにここ・・」
「お客様、こちらの商品は新作なんですよ。
どうですか?試着されて買われることを
オススメしますよ。」
「す、すいませんっ、今取り込んでるので後で・・」
えっ!?今の何だ?あたしの目が可笑しいのだと
誰か言ってくれ!!
「デザインは多種多様で、人気なものから
色の鮮やかなものまでざっとご案内致しますよ。」
誰か、この現実が嘘だと言ってくれ。
「お前、とんでもねぇとこ入ってくれたな。」
そうです、顔面蒼白というのはこのことだ。
前を見ないでお店に入ってきたあたしが自業自得
だということは重々承知の上で1つだけ言わせて
欲しいことがある。決して、好きで入ってきた
わけではなかったのよ。

