(分かってるだろ?ぼくにはもう、時間がない)

そう。

あんずだってほんとは分かってるはずなんだ。

ぼくはもう、行かなくちゃならない。

かみさまと、黒猫の天使の力を借りて、ここに来てるんだ。


(何も悲しむことなんてないよ。

ねぇ、あんず。

ぼくがいなくなることで泣いたりしないで。

悲しむことじゃないんだから。

いつかは誰にでも、必ずやってくることだろ?)


「わかってるけど……」


(ぼくはいつだってそばにいる。

いつだって見守っているから。

目で見たり、触れたりはできなくなるだけだよ。

だけど、そのことを悲しむ必要なんてどこにもないんだ)


「どうして…?」


あんずのかすれた声が、小さく響いた。