マリンブルー

ぼくたち犬は、人間よりもずっとずっと耳がいいから。

足音だけで家族のうちの誰が帰ってきたのかわかるんだ。

あんずの足音は、いちばん軽やか。

ぱたぱたって、飛び跳ねるようなうれしそうな音。


その音が聞こえると、ぼくはお座りの姿勢であんずのことを待つ。

すぐにあんずの姿が見えて。


「ただいま、マリン」


両手を大きく広げてあんずは笑う。

ぼくはあんずの胸に飛び込んで、思いきりなでてもらうんだ。


あんずがぼくをなでてくれてるとき、ほんとにうれしくて仕方なかった。