「――先輩の管理物件であったケースだけど。――ドライブ中のお母さんが、信号待ちでいきなり車から降りて、目の前にあったマンションから飛び降りたんだって。車の中で残されていた家族――小さな子どもたちは、呆然としていたそうだ」
楽しいドライブが一転、小さな子どもたちの心はどれほど引き裂かれただろうか。
「かわいそうね……」
タマの目じりにはうっすらと涙が浮かんだ。
タマは幼いときに母親を病気で亡くしている。
余計な話をしたようで、ポチは少し後味が悪かった。
コーヒーをごくごくと飲む。
後味の悪さをコーヒーの苦味でごまかした。
「――おまえさ、高校・大学と一緒だった白田って覚えてる?」
ポチの唐突な話題転換に、タマは少し首を傾げる。
「ン? ――あ~、シロくんでしょ? 背が高くてカッコ良かったけど、キミと『犬コンビ』ってみんなから呼ばれてた」
「おまえがそう呼びだしたのがきっかけだけどな!」
「あははっ、そうだっけ?」
タマはそう言って舌を出した。



