「じゃあさ、こう仮定してみろよ。相手が家族じゃなかったら?」


「え?」


「恋のライバルが赤の他人だったら、お前は兄貴を諦めたか?」


「まさか! 徹底的に戦って柿崎さんを奪い取るよ!」


「その理由は?」


「柿崎さんの本当の運命の相手は、あたしだからだよ!」


間違いない。柿崎さんの運命の恋の相手は、このあたしだ。


十年も前に巡り会って、想いを温め続けて、劇的な再会を果たした、このあたしなんだ。


断じて、ちょっと付き合っただけの女なんかじゃない。


柿崎さんがそんなチョイ役みたいな人と付き合うなんて、大きな間違いだよ。


間違ったことをそのままにしておけない。


あたしが本当の恋人になるべきだ。


「それが本当の、正しい、あるべき姿……」


あれ?


本当の? 正しい?


あれ? なんか……?


「気がついたか?」


自分で言った言葉に、自分でモヤモヤしているあたしに、大地君が後押しをする。


「そうだ。本来なら俺たちの恋が叶うべきだったんだ。それがあるべき姿なんだよ」


「…………」


「なのにライバルが兄弟なら、『正しいこと』ってのはひっくり返るのか? それはおかしいだろ。間違いを正さなくていいのか?」