「そういえば、思ったんだけどさ」 バンドの練習中、拓弥が思い出したように口に出した。 そんな奴はかなでの方をジッと見ている。 しかし、かなでは気付いていないのか、出来上がったあの曲を口ずさんでいる。 イヤホンをして、目を瞑るかなでの口からは心地よい音色が踊り出す。 「おかもっちゃん」 拓弥が名前を呼ぶが当たり前の如くかなでには届かない。 自分の世界へと入り込んでいるのが目に見えて分かる。