胸を、握り締められるような感覚だった。
わけ、分かんない。
なんだよ、それ。
訳がわからないまま、僕は彼女をものすごい力で引き寄せていた。
「馬鹿じゃないの…っ、」
「かすみざわくん、」
戸惑ったような宮藤さんの声が、僕の胸の中で響く。
「そんなに泣くなら…やめちゃえば良いのに、そんな関係。」
「え…?」
「あんな奴より君のこと愛せるやつ、他に沢山見つかるよきっと!!」
胸に彼女を閉じ込めたまま、僕は言い放っていた。
ほとんど、無意識のうちだった。
愛とか恋とか、馬鹿馬鹿しい。
可愛い女の子と、楽しく過ごせればそれで良い。
楽しいことと気持ち良いことが一番。
楽しくできればそれで良い。
自らしんどい道に足を突っ込むなんて、ほんとに馬鹿げてる。
…そう、思ってるはずなのに。
僕は、今目の前にいる、ろくでもない奴が好きな、ろくでもない、天邪鬼で可愛げのない、彼女が。
宮藤すずなが、好きなのだ。

