僕のすべてを、丸ごとぜんぶ。




――それは、宮藤さんが僕の胸のあたりを叩いた衝撃だった。



「…ッ、!!」

言葉にならない言葉を発して、宮藤さんが僕を思いきり睨んだ。
涙をいっぱいにためた、鋭い瞳に、僕はハッとする。





「ごめ…、」

「駄目だったの…っ」

僕の声に重なるように、彼女のしぼりだすような声が響く。




「駄目だったのっ…!どんなひとと、どんな形で付き合ってみてもダメ!!彼より好きな人なんて見つからないの…!!」

ぽろぽろと、紅潮した頬を雫が伝い出す。



「自分でもわかってるよ…。最低なことしてるって、しちゃいけないことしてるって…。よりによって、親友の…。彼より素敵な人なんていくらでも居て、……どれだけ面倒な人を好きになってるかって。だけど、だけど…っ!!!」


潤む瞳が、僕を捕らえる。
獲物を見るように僕の視線を捕えて、離さない。





「彼より好きになれる人が、いないんだもん…。」


彼女の言葉が、図書館に凛と響きわたった。