「宮藤さんって、猫被ってるよね。」
「それはお互い様でしょう?」
「僕は基本は優しいよ?君が冷たいから。」
「本当に優しい人は自分で自分を優しいなんて言わないと思う。」
「人当たりの良い宮藤さんはどこに行ったのかな?」
「人のこと脅す人に優しくする人がいたらそれは偽善者ね。」
僕の言葉に矢継ぎ早に返事を投げ返してくる宮藤さん。
それでも掃除する手を止めないところが宮藤さんらしい。きっと、根っからの優等生で育ってきたんだろう。しっかり者で、何でもそつなくこなす優等生。
だからこそ、素を見せられる相手が少ないのか。
「宮藤さんって人気者だけど、ほんとの友達は少ないでしょ。」
僕が言うと、宮藤さんは気にするでもなく言葉を紡いだ。
そして、僕をしっかりと見て言った。
「貴方に言われたくない。お互い様、でしょ?」
「そうだよ。僕が素を見せられるのは、君だけだ。」
宮藤さんに言われて、実感した。
僕がこんなに悪態をつけるのは、宮藤さんだけだ。
それを聞いた宮藤さんは、え、と、珍しく戸惑いを見せた。
「な、何言い出すの、馬鹿じゃないの、」
そんな彼女を、僕は。

