満開だった桜が、もう青く日を透かす葉っぱになったのが窓の外から見える。
僕は相変わらず、彼女の後ろ姿を眺めながら授業を受けている。
宮藤さんは相変わらず人当たりの良い優等生で、僕もまたそこそこ人気者の転校生だ。
いや、僕はもう、2年前からそこに存在していたように、この学校に馴染んでいる。昔からそこにいるような、そこそこの人気者だ。
そんなある日。
幸か不幸か、宮藤さんにとっては確実に後者であろう司令が、担任からくだった。
「今日は10日だからー、出席番号10番霞沢ー、ついでに11番宮藤ー!明日の授業で使う旧館の教室、軽くで良いから掃いといてくれないかー?すまんな、頼む!」
悪びれる様子もなく担任はそう言うと、ホームルームを終わらせて教室から出て行く。
それに続くように、クラスメイト達もそれぞれ放課後にむけて席を立っていく。
仕方ない。
僕も旧館の掃除に向かうため、席を立つ。
「宮藤さんは忙しいだろうし、僕一人でやっとくよ。」
どうせ僕と二人で掃除なんて、宮藤さんにとっては拷問以外の何者でもないだろう。
僕が言うと、宮藤さんは前を向いたまま、声を発した。
「…いい、私も掃除する。」
背中で返事をすると、彼女は僕より先に旧館に向かってしまった。

