(水月side)


「……見回りか?」

「まあな。
先帰ってて。」


「……わかった。」


あれから旧校舎を出た我らは裏門で別れた。


自宅に帰る途中、学校の方向に振り向いた。


天瀬は学校に残り、妖怪達の見回りをしている。


大丈夫だろうか……。


そんな考えが浮かんだが……きっと大丈夫なのだろう。



天瀬が来てからは、危なげだった妖怪達の所行はピタリと止み……妖怪達も、大人しくなっていった。



数日前に見た怨霊は本当に危なそうだったのに……


天瀬は怪我一つもなく、あの怨霊を消した。



怨霊の黒いモヤ(邪気だと天瀬から聞いた)でしばらく具合悪そうだったが……


無傷で済んだと言う事は、強い陰陽師と言う事なのだろう。


だが……それでも、戦わなくてはならない。



朝、教室に天瀬が見えなくて……



電車ジャックに巻き込まれたと知った時……全身が、冷えるかのようだった。



天瀬が学校に来た姿を見て……どれだけ安心したか……。



『…私より綺麗に縫えてる……。

スゴい上手……!』


あの時の、言葉が蘇る。



『ありがとう。
やっぱ氷室ってイイ奴!!』



あの言葉………


今でも、暖かい………。



天瀬静夜………か。



「あんなに………
優しく笑うのだな………。」



心に言葉の温もりを感じながら



明日、また会えたらいいと思いながら



再び、歩き出した。