「い、いや……、何も「天瀬」………分かったよ、言うよ。」


氷室の目と声に軽く押されて、白状する。


「…キレイだけど、感じ悪いって思ってた。」

「……………。」


氷室は、眉一つ動かさずに聞いていた。


「………でも、それだけじゃないって、思った。」

「…………?」


私の続きに、氷室は少しだけ顔を変えた。


「…昨日の氷室を見て、不思議な人だって思った。」


「不思議………?」


「何ていうかな………感じ悪いって分かってても、全然不快じゃないんだよね。
むしろ、話してなくても落ち着くって感じる。

だから、不思議だって。」


あーあ、言っちゃったよ……。


ジュースを一口飲んで氷室を見ると、少し俯いていた。


よく見ると、白い顔にうっすら赤みがあるような……?


「………………帰るぞ。」


ガタッと氷室が席を立った。


「へっ!?もう!?」

「家まで送ろう。
……だから、帰るぞ。」

「ちょっっ、待てって--」


~♪~♪♪~


言い掛けてた所に、ケータイが鳴った。


誰だよこんな時に!!!

「~~~、もしもし!?」


氷室に待てのジェスチャーをして、電話に出る。


沙那からだった。


「……え?
もうか!?
っ、分かった、すぐ行く!!」


電話を切ると同時に、ケータイを閉じる。


「どうした?」

「仕事だ!
悪いけど、先帰ってて!!」


言うないなや、氷室を押しのいて教室を出た。


公園で妖怪が暴れているらしい。


急いで行かないと!!


押しのかれた氷室は、廊下を走り込む私をじっと見つめていた。



顔に少しの落胆と恥ずかしさを浮かばせて………。