受付で手続きを済ませて、そろそろ戻ろう、と話になった時。



「キャーー!」

「っ!!?」


女の悲鳴……!?


まさか!
妖怪……!?


悲鳴の方に振り向くと。



「キャーー!」

「王子ぃ~っ!」


…なんじゃありゃ。


視線の先には、
…氷室と大勢の女子達がいた。


さっきのは、女子達らしい。


「…ねぇ、ああいう声ってどこから出すのかしらね?」


エリカが呆れたように私に耳打ちする。


「…さあ?」


私もエリカに同意見。

身構えた私がバカみたいじゃないか、紛らわしい!!



つか、思いっきり図書館の迷惑だよね、あの声。



先頭の氷室は黄色い声を出す女子達には気にも止めず、文庫のコーナーに向かっていく。



途中で目が合ったが、すぐに目を逸らして進んでいった。



氷室の無表情な顔を見て、胸がモヤモヤする。



昨日の事……やっぱりなかった事にする気なのか?



…いや、普通そうするよな、あんな場面見たんだから。



そうは思っても、昨日の記憶が蘇る。



昨日の日溜まりのような不思議な感じの氷室と、



今の氷のような冷たい感じの氷室……。



「あ~…、騒がしいわね。
早く出ましょ?静夜。」


「……え?
ああ…出ようか。」



エリカの声に慌てて現実に戻り、部屋を出る。



「………………………。」


この時部屋を出る私達の後ろ姿を、氷室はじっと見ていた……。