エナメルの楕円形


知っているの。
亮一さんが私の中に見る魅力は、狡猾な女の虚勢と虚栄心。
友里に対抗するための、高慢なプライド。

だからゾクゾクするんでしょう?
だから抱きたくなるんでしょう?

友里にはないものだから。
私が欲しくなるのよね?


自分のデスクへと身を翻す亮一さんのネクタイは、淡いピンク色のストライプ。

趣味が悪いのよ、今時。
夫婦で色を合わせた小物を使うなんて。

マニキュアの匂いに酔ったのか、今日の私はいつもにも増して醜い。


「えへへ。亮ちゃん、麻美のネイル、気が付くかなあ」


友里はそう言って無邪気に笑う。


……ううん、友里。
あの人はきっと気が付かない。
だっていつもあの人は、私の指先に興味なんかないから。


ブブブ、ブブブ……

私のデスクの上の携帯が、深いブルーの色に光る。
差出人はわかっている。


奥さんがすぐ側にいるのに。
……危ない人。

だから尚更きつく、私を抱きしめたくなるんでしょう?


怖い人。
狡い人。
酷い人。


今日あなたの背中には、お揃いのピンク色が……

奥さんの選んだ、私の初めてのネイルが、這うのかもしれないというのに。









end