俺はちゃっかり絢を抱きしめて、


「おい、“バッ”って何だよ」

「………」

「まさか、バカって言うつもりじゃなかった……よな?」


俺は声をワントーン下げて、威嚇する。


すると、俺の腕の中でビクッと強張る絢。

そんな彼女の耳元で


「バカ呼ばわりしたら、お仕置きするぞ?」

「ッ?!まっ、まだ言ってないじゃん」

「へぇ~、やっぱり言う気だったんだ」

「ッ!!」


俺の胸に顔を埋めたままの絢は、

ブレザーをぎゅっと掴んで固まった。


「おいっ、いつまでそうしてんだよ」

「ふぇっ?」

「信号が赤になるだろうが」


信号機を指差すと


「えっ、あっ……」


慌てて俺から離れた彼女の手首を掴み


「行くぞ」

「うん」


俺は彼女と共に歩き出した。