「腕は背中じゃなくて、首に回してみ?」
「ふぇっ?」
「こうやって」
彼にレクチャーされる。
私の腕を掴み、自身の首に巻き付けるようにさせた。
「身長差があるから、これされたらおねだりだと思うことにする」
言葉にならない。
郁さん、そんなルール作っても私には無理ですから。
彼が首筋に顔を埋めた。
彼が好きだという首筋のほくろあたりに。
「そういう顔されたら、手加減出来ないからな」
「ふぇっ……?」
そういう顔?って、どんな顔?
分からないけど、彼の唇の感触が心地よくて……。
ここが砂浜だということも忘れそう。
鎖骨あたりにチクっとした痛みを感じた。
彼からの愛の印が押されたらしい。
「ここが地元じゃなきゃ連れ帰るとこだけど、今日は我慢しとく」
「………別に気にしなくていいのに」
「え……、いいの?」
「私、もう30歳過ぎてますし、見知らぬ男性についていくわけじゃないですから」
「まぁ、そう言われれば……」
「それに、責任取ってくれるんですよね?」
「当たり前だろ」
「なら、問題ないのでは?」
「フッ、……早速おねだりと来たか」
「えっ、あ、これが?そうなの……?」
「天然だな」
「てっ、天然って……」
こういうおねだりの仕方もあるのか。
なるほどね。
こういうやり取りなら出来るかも。
「潮風で髪がベタベタだから、シャワー浴びたいです」
「おっ、一緒に浴びるか?」
「別々に決まってるじゃないですか!」
「俺は一緒でもいいぞ?」
「明るい所で見たら、幻滅しますよ?」
「へぇ~、これから毎日明るい所で見るつもりだけどな」
「えっ……」
にやりと口角を上げた彼。
冗談では無さそうだ。
これからの生活は甘くて刺激的で、彼との時間がもう少し増えそう。
サイコっぷりはだいぶセーブしてくれてるみたいだけど。
時々思考を停止させるほどのサイコっぷりがまた堪らなくて。
そんな彼をこれからもずっと見ていたいから……。
「んッ?」
チュッと彼の唇にキスをした。
郁さんっ、大好きっ!
~FIN~



