2月中旬。

体に纏う空気が一段と寒さを増す中、

俺の手はいつだって温かい。


だって、いつでもひんやりしている彼女の手。

その手を温める為に俺はいつでも温かくしておく。


金以外の為に女にここまで尽くしたのは彼女が初めて。

それくらい俺の中での存在は大きい。



「葵」

「ん?」

「ごめんな?もう少しの辛抱だから……」

「大丈夫だよ。こうやって、逢える時にう~んっと甘えるから////」


研修医なんて名前ばかりカッコ良くて、

実際は“病院のゾンビ”と言われるほど、現実は厳しい。


日中は実践的な知識を得ながら先輩医師に付いて回り、

担当させて頂いている患者様の管理をしながら、

レポートの山に追われ……

そして、教授達のご機嫌を窺いながら

寝る間を惜しんで仕事に励む。


毎日の睡眠時間は1~2時間。

食事はパンを齧ったり、栄養ドリンク剤を流し込んだり。


病や怪我を患ってる人を看る筈の医師が

患者を看るよりも先に倒れそうだ。


インターン期間が終わる頃には、

医師国家試験に合格した者であっても

医療現場から姿を消す者が多い。


それくらい過酷で現実は厳しい。