こいつが毛布をかけたのか?

こんな事人にしてもらったのは初めてだった。


さっきまで泣いていたくせにケロっとした顔で雑誌を読んでいる。



「あーこのネックレスかわいい!」



奈緒は雑誌に見入っていた。


一瞬そのページを覗くと、ハート型のキラキラしたネックレスを身にまとったモデルが、最高の笑顔で写っている。



「わ・・・高っ」



値段を見たのか残念そうな表情で、パラパラと他のページを見始めた。



・・・そういやこいつ今度誕生日っつってたな。


この前栞が、わざとらしく何度もこいつの誕生日の事を言ってきた。

あいつも友達思いだよな・・・



奈緒がシャワーを浴びている間、雑誌を手に取り、さっきのページを探しだす。

見つけて値段を見ると・・・


驚いた。

5万だと。


俺は静かに雑誌を元の場所に戻した。


たかがネックレスに五万て。阿呆らしい。

百合にあげたブレスレットは2000円だった。

今だったら・・・もっと良いものあげられたはずなのに。


百合のあの冷たくなった手を思い出した。


ひんやりして、二度と握り返してこないあの手を・・・


頭がガンガンする。


俺は眠ったふりをした。


浴室から出てきた奈緒に、俺の今のこの表情を見られたくなかった。