* フェリックスは階段を見上げた。 綺樹がゆっくりと上っている。 やがて上がりきると、右に曲がっていった。 その先は書斎だ。 フェリックスはため息をつくと、使用人が差し出していたコートを戻すように言い、階段を上がりだした。 フェリックスはこの屋敷で暮らさず、少し離れた街に家を借りている。 朝食を食べた後に出勤し、夕食を食べた後に帰宅する。 今夜もいつも通り帰ろうと思ったのだが。