気を紛らわすために写真集を開いた。 外国の小さな街の風景を集めたものだ。 西園寺を継ぐ者であるとは知らない頃、この写真集を見て決めていたことがある。 アルバイトしていたイタリアレストランで働き、お金が少し貯まったら、こういう街を訪れ、働きながら暮らす。 またお金が貯まれば、次の街に移る。 そうやって暮らしながらの旅をしようと。 でも綺樹と出会い、諦めた。 納得もした。 今、綺樹を切るなら西園寺を捨ててもいいはずだ。 そうすれば夢を実現できる。