エリザベートが拭く物を持ってこさせようとすると、腕を伸ばして止めた。

綺樹自身、滴ってくるのを拭いもせず、顔を昂然と上げ、ウォーキングを再開する。


「いいだろう」


しばらくしてフェリックスは一言言うと部屋を出て行った。

綺樹はその場に座り込むと、ハイヒールを引っ張りはがす。


「くっそ」


小さく毒づく。

かかとは皮がめくれ上がり、赤くてらてらとした肉が見えていた。

親指と小指の両脇には水ぶくれだ。


「すぐに手当てを」


浴びせられた水は、殆ど乾きかけていたが、エリザベートは綺樹の肩にタオルをかけた。


「ありがと」


呟き、タオルに顔を埋めてわからないようにため息をつく。