”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


「どうしました?」


会話の途中で黙りこくってしまったらしい。

相手の男が覗き込んでいる。

名前を聞いたが、忘れてしまった。


「ちょっと疲れてしまったみたいで」


そうだ。

疲れてしまった。

1人の男の前でどうしていいのかわからず、強要される“何も無い”という距離を保って、そばにいるのに。


「どこかで休まれますか?」


場合によっては親切な申し出だ。

だがそれはいくらでも応用が利く。

綺樹は男と目を合わせた。