「ん?
この間、日本にいた時、何度かパーティーで顔を合わせたよ。
なかなか面白い男だ」
あいつ、ひとっ言も聞いてないぞ。
「ま、おまえが展示を見て、どういう意見を持つか聞いてみたかったんだけど、しょうがないな」
涼は口をつぐむ。
「おれは素人だ。
たいした意見なんて出ないさ」
「展示に来る見学者は大方素人さ。
今回、展示方法に私が口を出したから、ちょっとどうかと思って」
涼は黙り込んだ。
「会期中には見に行く」
綺樹は腕を伸ばしてカップを掬うように取り上げる。
「うん」
穏やかな微笑。
多分、涼は行かない。
所詮、そうなのだ。

