「来れなかったんだな」 マグカップからコーヒーをすすりながら言う。 「最初の方は居た。 用事があって帰ったけど、おまえの挨拶は聞いたよ」 カップに口をつけたまま涼を上目遣いで見る。 女と寝る方が優先順位は先なんだな。 カップをローテーブルに置いて手足を伸ばす。 涼が何をしてきたか部屋に入ってきた時に見抜いていた。 「そうか。 成介の姿を見かけたから、お前の代わりかと思った」 「成介? 顔を知っているのか?」 名前しか教えていない気がする。