”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


    *

襟元を開け、ジャケットを肩にかけて入ってきた。

着崩した感じも様になっている。

乱れた前髪が額にかかって、憂いた影を作り、こちらの心をざわつかせる。

この男はまだ大人の入口に差し掛かったばかりだというのに。

綺樹はちらりと見上げた。

涼は綺樹が部屋に帰っていることに驚いたようだった。


「随分、早いな」


部屋着姿でリビングのソファーで丸くなり、コーヒーを飲んでいた綺樹は肩をすくめた。


「レセプションだ。
 そんなに長くない」

「そうか」


涼はばさりと上着を反対側のソファーの背に置いた。