”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


「なぜ彼女はこの絵画の前で写真を撮ったんでしょうね」


成介が呟いた。

涼は答えずに、再び綺樹の方を見た。

男とぴったりと体を寄せ合い、数人と談笑している。

その男が触れたくちびるの感触も、手を当てている腰の質感も、こんなに時間が経っても、まざまざと蘇ってくる。

腕の中に収めた時の、収まり具合。

伝わってくる体温。

ほのかに香るボディークリーム。

心臓が一つ波打ち、涼は剥ぎとるように視線を外した。