”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


涼の向こうの絵画に視線を止めて、歩み寄った。


「今回の美術展の紹介のパンフの裏に、彼女と一緒に写っていたんですよ」

「有名なのか?」


涼は成介と並んで絵画の前に立った。


「どうでしょうね」


まったくこいつは。

涼はじろりと睨んでから絵画を改めて見た。

嵐の海の風景。

中央に海に落ちた女性が、左側に描かれた難破しそうな帆船に腕を伸ばしている。

波打つ金髪は宝石で飾られており、むき出しの胸元に大きな石のネックレス。

白い腕にも宝石の繋がったブレスレットが光っている。

貴婦人が船から落ちたのか。