”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


涼は自分の眉が一瞬跳ねるのを感じた。

綺樹は少し戸惑った様子を見せたが、すぐに微笑に代えた。

当然のように綺樹の腰に手を回して、会場を歩き出す。

二人を中心に人の輪があり、フラッシュが焚かれている。


「なんだか、婚約会見のようですね」

「成介。
 なんでおまえいるんだよ」

「これでも西園寺の端くれなので」


全然、答えになっていない。


「おまえがいるんだったら、おれは帰る。
 西園寺が一人いれば十分だろ」

「わざわざお祖父さまに頼んで代わってもらった人の発言とは思えませんが」
含み笑いをしている。

「嫉妬ですか?」


ぎろりと睨むと、成介はグラスに口をつけながら、綺樹たちを眺めていた。