”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


綺樹は拍手で迎えられ、そのまま壇上に上がった。


「こんばんは」


いつもの落ち着いた声。

穏やかな微笑を浮かべている。

しっかりと化粧をすると、やっぱり外国の血が入っているのだな、と思うし、ぐっと年上に見える。

涼は遠巻きに見つめながら、中身は違うぞ、と胸の中で茶々を入れた。

短気な所はあるし、すねるし、結構わがままだ。

思わずにやにやっと笑っていると、完璧な日本語で挨拶を終え、拍手の中、壇上をおりた。

下で綺樹を待ち構えていたのはスペイン人と分かる男だった。

綺樹は彼がいたことに驚いた顔をしてから、すぐ微笑していた。

抱擁し、挨拶のキスを受けるように頬を寄せる。

男は綺樹を腕に囲ったまま、当たり前のようにくちびるを一瞬合わせた。