「そういえば、すっげえ、いい所に一人暮らしだよな」


涼は仲間の篤志をちらりと見た。


「この大学で、別に珍しくないだろう」

「まあ、そうだけど。
 西園寺の屋敷に住んでなかったのかー。
 俺、一度、あそこに入ってみたいと思ってたんだよね~」


誰かが、私もと言っている。

結局、涼がOKしたのは、マンションでの綺樹の思い出を、何かで上塗りしたかったからだ。

綺樹と過ごした時間を忘れたいならば、出るべきだというのに。

向こうは縁を切ったというのに。