「今年の収穫は期待できそうだな」 綺樹はくつくつと笑った。 フェリックスが、本当は違うことを言いたかったことに、気が付いているのだろう。 「あいつが、家を放り出したぞ」 祖父の社葬が終わった後、涼は社長を退陣し、そのまま行方がわからなくなった。 綺樹の口元の微笑が大きくなった。 フェリックスはそれを見下ろした。 「そう。 それはあいつらしいね」 綺樹はそれだけ言って再び窓の外へ顔を向けた。