*

天井近くまであるフランス窓が大きく開けはなれていた。

綺樹は窓の側に置かれた、長椅子に座っていた。

遠目ではわからないが、膝の上に写真集のような本が載っている。

窓の外から見えるのは、広大な金色に色づく畑、うっそうとした森の端、日の光を反射している池だ。

眺めながら、綺樹のうっすらと微笑している横顔が見えた。


「ずいぶん、ご機嫌だな」


部屋に入ってきたフェリックスは、そっけなく言った。

綺樹が長椅子の背に肘をつき、頭を支えてこちらを見る。


「まあね」


にやっと笑った。

まったく、この女は色々と企む。

フェリックスは傍らに立ち、綺樹がさっきまで眺めていた風景を眺めた。