”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


  *


「ああ、うん。
 わかってる」


涼は無機質に答えながら書斎に入った。


「今、出すから」


成介から携帯に電話が入り、葬儀で止まっていた書類の確認が入った。

書斎の机に置きっぱなしだったのは憶えている。

涼は電気を点けて、デスクに歩み寄った。

乱雑に散乱していた書類は、一隅に山となって重なっていた。

揃えた、というレベルではなく、とりあえず積んであるだけ。

そしてスペースの空いた机の中央にあの写真集が、乱雑さと対照にきっちりと置かれていた。

外国の小さな街をまとめた写真集。