* 「ああ、うん。 わかってる」 涼は無機質に答えながら書斎に入った。 「今、出すから」 成介から携帯に電話が入り、葬儀で止まっていた書類の確認が入った。 書斎の机に置きっぱなしだったのは憶えている。 涼は電気を点けて、デスクに歩み寄った。 乱雑に散乱していた書類は、一隅に山となって重なっていた。 揃えた、というレベルではなく、とりあえず積んであるだけ。 そしてスペースの空いた机の中央にあの写真集が、乱雑さと対照にきっちりと置かれていた。 外国の小さな街をまとめた写真集。