変わらないエゴイストの香り。 広く暖かい胸板。 安心して力が抜ける。 もしかしたら、これはこの男なりの慰め方なのだろうか。 わからなかった。 いつでもフェリックスという男はわからない。 綺樹は口元に微笑を浮かべた。 それでいいのかもしれない。 反らせていた首が痛くなり、素直に額を胸につけた。 甘えてみるのもいいだろう。 綺樹はフェリックスの胸に顔を埋めながら、そっと目を閉じる。 そして聞いた。 「フェリックス。 私を串刺しにした奴等は、おまえの意図通りだった?」