”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


私的録音のようだ。

弾き手が練習をチェックするために録音したもの。

プロでは無いようだったが、十分に聞けるだけの腕はあった。

好きな曲想の付け方だ。

今度の恋人はピアニスト志望なのだろうか。

ショパンのワルツ10番に変わった。


「久々だろう。
 まともに踊れるか?」


フェリックスが立ち上がってソファーの前に回ってきた。

手を差し伸べている。

その唐突さに驚いたが、綺樹はズボンのポケットから手を出すと重ねた。