”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


   *


「よお」


声に驚いて顔を上げると、綺樹が変わらぬ様子で、ふらりと入ってきた。

フェリックスの書斎机の前にあるソファーに、足を投げ出すように座った。


「順調?」


フェリックスが鼻先で笑って、目の前の栗色のつむじに問いかけた。


「どうしたんだ、いきなり帰ってきて?」

「ん?
 離婚してきた」


奇妙な沈黙の中、綺樹は流れているピアノ演奏に耳を傾けていた。