”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


   *


「間に合いましたかね」


ゲートをくぐろうとして、その声に振り返った。

柵の向こうに成介が立っていた。

固い表情だ。

成介にしては珍しく、髪も乱れ気味だった。


「よく、わかったな」


空港係員に少し待ってもらうように頼むと、柵に近づいた。


「藤原が連絡をくれました。
 引き止められるのは私だけとのことで。
 あなたに去られたら、若主人がどうなるか、よくわかっているからでしょう」


どこか投げやりな調子だった。