* 「間に合いましたかね」 ゲートをくぐろうとして、その声に振り返った。 柵の向こうに成介が立っていた。 固い表情だ。 成介にしては珍しく、髪も乱れ気味だった。 「よく、わかったな」 空港係員に少し待ってもらうように頼むと、柵に近づいた。 「藤原が連絡をくれました。 引き止められるのは私だけとのことで。 あなたに去られたら、若主人がどうなるか、よくわかっているからでしょう」 どこか投げやりな調子だった。