綺樹は動きを止めて、目を合わせた。 いつも微妙に外されている焦点が合う。 心の奥底を覗き込まれる。 「政略結婚は幸せになれないよ。 自由になろう」 綺樹は幸せになれないのか。 涼は見つめるだけで声が出なかった。 確かに自分の行いを思えば、幸せとは言えない状況だった。 でも、もともとは綺樹が透明な壁を築いて、拒絶したのが始まりではないか。