涼の顔が強張り、目の焦点が固定する。 「いやだ」 即答だった。 この女は本当に、こちらの心臓を打ち抜くのが得意だ。 素直に頷くとは思っていなかったのだろう。 無言のまま、腕をもみほぐしている。 このままでは方向が変わらず、綺樹は出ていき、離婚だ。 「いてくれるだけでいいから」 喉の奥底から絞り出す。