”オモテの愛” そして ”ウラの愛”


先ほど、自分がしでかしたことは、やり方は最悪でも、気持ちは間違いなく素に近かった。

それが自分らしくないと言われたら。


「お気に入りの愛人って、もしかしてプロポーズした相手?」

「暁子は愛人になるタイプじゃない」


思わず、即効で言い返していた。


「そうか、悪かった」


綺樹が視線を伏せた。


「いや」


涼は罰が悪くなり言葉を濁す。

綺樹はしばらくカーテンに施された刺繍を眺めていたが、ちらりと涼を見上げた。


「成介。
 結構、腹に据えかねているぞ。
 おまえの経営者としての姿勢に」


涼はため息をついて、グラスをいらただしげに置いた。